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昨日に続いて遺言のお話です。
民法では遺言の方式として7種類のものが定められています。
そのうち、「公正証書遺言」「秘密証書遺言」「自筆証書遺言」については、一般的なのでそこそこご存じの方も多いのではないでしょうか。
それに比べて、残りの4つについてはなかなかマイナーな気がしています。その内容からして仕方がないとは思うのですが、海や船の手続を扱う海事代理士としては少し関係することもあり、ちょっと頭に入れておきたい内容です。
民法では、上記3つの方式以外に、次の4つが定められています。
1)一般危急時遺言(死亡危急者遺言)
2)難船危急時遺言(船舶遭難者遺言、難船臨終遺言)
3)一般隔絶地遺言(伝染病隔離者遺言)
4)船舶隔絶地遺言(在船者遺言)
簡単に解説したいと思います。
1.一般危急時遺言(死亡危急者遺言)について
これは、生命の危険が急迫している場合に、通常の遺言の厳格な要件を満たすことが難しいことからこれを緩和するために定められているものです(民法976条)。
例えば、病気で入院している人が今際の際に最期の言葉を遺す場合などに、証人が3人以上立ち会い、そのうち1人が遺言者の遺言を筆記し、各証人がその筆記が正確なことを承認し署名・押印することによって遺言とすることが可能です。
作成日付については、書かなくても遺言が無効となることはありません。
ただし、この遺言の方式の場合は、遺言の日から20日以内に証人の1人または利害関係人から家庭裁判所に請求し確認を得ることが必要です。この確認によって効力が生じることになります。
2.難船危急時遺言(船舶遭難者遺言、難船臨終遺言)について
これは、船舶が遭難した場合に、その船舶内で死亡が迫った者が証人2人以上の立ち会いで口頭により遺言をすることができるというものです(民法979条)。
この遺言の方式の場合も、作成日付については書かなくても遺言が無効となることはありませんが、やはり証人が筆記をして署名・押印し、証人の1人または利害関係人から「遅滞なく」家庭裁判所に請求してその確認を得なければならないことになります。
ただ、今にも沈む船の中で、お互いに遺言しあって生き延びた人が後日手続きを行う、ということを想定しているのでしょうか、なかなか実際にはイメージしにくい状況です。
3.一般隔絶地遺言(伝染病隔離者遺言)について
これは、伝染病のための行政処分によって隔離された者が、警察官1人と証人1人以上の合計2名以上をもって作成することができるというものです(民法977条)。
一応、条文上は「伝染病のため」となっていますが、刑務所内の者や洪水・地震等により事実上交通を断たれた場所にある者も含まれると解釈されているようです。
4.船舶隔絶地遺言(在船者遺言)について
これは、船舶内にいる人が、船長又は事務員1人と証人2名以上の立ち会いをもって作成することができるというものです(民法978条)。
船舶に関しては、航海に従事する船舶のみを指す、という説と、湖川航行の船舶を含む、とする説があるようです。
また、条文上「在船中」という言葉は、船舶が航行している時だけではなく、停泊中でもよいと解釈されています。
この方式の遺言をすることができる者は旅客と事務員(船長以外の船舶職員)とされています。船長は事前にしておきましょう、ということですね。
ちなみに、飛行機の場合、短時間で隔絶状態が解消されるという理由からこの方式による遺言は認められていないようです(自筆証書遺言や一般危急時遺言などの方式は可能)。
以上、ご参考になればと思います。
遺言についていろいろ書いていますが、「遺言」は一般的には「ゆいごん」と読む人のほうが多いのではないでしょうか。
自分はそもそも遺言というものについて法律を学ぶまでそれほど意識したことはなかったのですが、それまでは「ゆいごん」と読んでいたような気がします。
民法、家族法を学んで、「いごん」と読むのだと知りました。まぁどちらが正しいとか主張する気はないのですが、今現在、自分の中では「いごん」がスタンダードです。皆さんはいかがでしょうか。
さて、似た言葉に「遺書」という言葉があります。こちらは「ゆいしょ」ではなく「いしょ」と読むと思います。
また、「遺言書」という言葉もあります。
では、これらの言葉はどのように違うのでしょうか、それとも同じなのでしょうか。今回はこれを整理してみたいと思います。
法律の学術書などを読むと、「遺言」は「自己の死亡とともに身分上あるいは財産上の法的効力を発生させる目的で一定の方式に従って行う、相手方のない単独の意思表示」などと定義されていますが、ここからも分かる通り、遺言とは意思表示の一種になります。
また、民法などの法律の条文に出てくる、法律上の用語です。
この遺言を書面に表したものが「遺言書」ということになりますが、法律上は遺言の方に意味があるため、「公正証書遺言」とか「自筆証書遺言」というように、「~という書面に表した遺言」というカタチで登場します。
これに比べて、「遺書」という言葉は法律の条文には出てきません。一般的には、遺訓や単なる心情、希望を記載したものを指し、法律効果の発生を意図した内容に限らないので、「遺言」を表した「遺言書」よりも大きな意味の概念で捉えられているようです。
ちなみに、例えば公正証書遺言を作成する際にも、遺訓や単なる心情、希望を記載することは可能ですが、通常は「付言事項」として法律上の意味を成さない事項として最後にまとめて記載することが多いです。
ただ、法律上の意味はなくても、遺言者や相続人などの当事者にとってはそちらのほうが大切だったり、重要な意味を持っていることも少なくないので、私としてはけして軽い扱いをしないようにしています。
いずれにしても、故人の思いが遺された方に伝わるようにお手伝いしたいと思います。
したがって、一般的には公正証書遺言の方法を選択することになるでしょう。
この場合も、遺言者の署名ができないのではないか、という心配があるかと思いますが、公証人法39条4項で、公証人は嘱託人(公正証書を作成して欲しいとお願いする人のこと)が署名できない場合に、その旨を記載して押印することができることになっています。
さらに、民法969条4号でも、公正証書遺言において遺言者が署名できないときは、公証人が事由を付記して署名に代えることができる、とされています。
実務上は、公証人が遺言者の氏名を代署し、署名できない理由を付記して職印を押印する、という処理になっているようです。
ちなみに、公証人法30条において、遺言にかぎらず公正証書の嘱託人が目の見えない方の場合、立会人の立会が必要とされていますが、公正証書遺言の証人2名とこの立会人は兼ねることができるため、別に立会人を用意する必要はありません。
なお、「口のきけない者」「耳が聞こえない者」については、民法969条の2において定められています。
(公正証書遺言の方式の特則)
第969条の2 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第2号の口授に代えなければならない。この場合における同条第3号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第3号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前2項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
つまり、「口がきけない者」「耳が聞こえない者」は通訳人を介して遺言を行う、ということになります。

光永行政書士・海事代理士事務所(Office.MITSUNAGA)所長
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行政書士・海事代理士の取り扱い業務は下記のとおりですが、比較的多いのは建設業、倉庫業、漁業関係、運送業、遺言・相続、ペット(愛護動物)関係手続きです。
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